にわオタレビューブログ

にわかなオタクがアニメ、ラノベ、エロゲーなどのレビューをつづります。まったく関係ないこともつづります。

あけいろ怪奇譚 感想

あけいろ怪奇譚

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あらすじ

四人の女学生が立て続けに自殺した。
学園性達の間で、女学生は学園七不思議の一つ『旧校舎の幽霊』に呪い殺されたのだと噂される。
主人公・佐伯社は四人の女学生が自殺してから、奇妙な夢にうなされるようになっていた。
眠ることが出来ず、日を追う毎に衰弱していく中、彼の前に一人の少女・ベルベットが現れる。
「あなた、呪われている」

 

感想

三月発売のエロゲー記事、『まいてつ』に続いて二作目です。
シルキーズプラスは同様の世界観で前作も中々読ませてくれる作品を打ち出してきていたので、今回の作品もかなり期待しておりました。
そして、その期待。裏切られません!
自分は全ヒロインを攻略するという行動が中々取れないタイプの人間なのですが、その自分を持ってしても完遂させる魅力が今作にはありました。

 

大半のエロゲーで全ヒロインを攻略しようという気にならないのは、単純にキャラゲーが多く、そのヒロインのための物語でしかないため、ヒロイン自体に魅力を感じなければ食指が動かないという点が問題でした。
しかし、今作の場合はヒロインごとに主人公の社が成長する方向が大きく変わり、それはさながら少年漫画を思わせる熱い展開が待っていたのです。
なので共通ルートの中でヒロインに魅力を感じなくても、そのヒロインのルートではどんな社の成長が見られるのかが気になって次々と手を進めてしまうわけですね。
この構造は最近メディア展開のめざましいフェイトシリーズの原点、『Fate/stay night』に通じるものを感じます。

 

霊に取り憑かれやすいという性質を持った主人公。
一般人になる。霊能者になる。自らが化け物になる。彼ならではの特性が転がる道筋が選ぶヒロインに寄って変化していく面白さ。
ヒロイン以外の要素でも、エロゲーというパラレルワールドが許される媒体だからこその利点を遺憾なく発揮できていたように見受けられました。

 

ただ、共通ルートの段階ではどのキャラも魅力に乏しく、攻略するキャラを考える際に「誰でもいい」と思わせられたのは欠点かもしれません。

 

しかし前回に勝らずとも劣らない、見事なエロゲーだったと思います。
次回作も大変楽しみです!

まいてつ 感想

まいてつ

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あらすじ

鉄道車輌を制御する人型モジュール・レイルロオド。
旧帝鉄 8620系蒸気機関車のトップナンバー機、8620の専用レイルロオドであるハチロクも、
他の数多のレイルロオドたちと同様 大廃線に伴って廃用され、長い眠りについていた。
廃線による鉄道事故で家族を失くし、隈本県は御一夜市の焼酎酒造・右田家の養子となった少年・右田双鉄。
長じて帝大へと進学した彼は、第二の故郷を工場誘致による水汚染から救うべく、御一夜へ帰還。
そこで偶然にハチロクを目覚めさせ、そのオーナーとなる。
双鉄とハチロクとは それぞれの目的を達成するため、行方不明になっている蒸気機関車8620の捜索を決意した。

 

感想

一時、秋葉原へ行けば必ず目に付いてしまうほどの派手な広告、その他実際の電車企画など面白い公報が話題を呼んで嫌が応にも意識せざるを得なかった今作。
一部では約束された神ゲーとまで称され、発売日を今かと待ち望んだエロゲーマーは少なくないでしょう。

 

さて。そんな『まいてつ』ですが肝心の中身はというと……普通でした。
決して悪くはありません。目立った悪いポイントもありません。
いいところはたくさんありました。でも普通でした。

 

見所はレイルロオドという、ローゼンメイデンをR2D2のようなポジションにしてみたキャラクターたち。
彼女たちを原動力に、SLを復活させ、地域の観光資源としようというのが今回のお話です。
SLのある背景グラフィックの優美さはさすがといったところ。
作中で度々差し込まれるSL関連の知識はあくなき取材への熱意を実感させられ。クリエイター達の魂を彷彿とさせてくれます。
お話自体も納得できる要素できれいにまとまっており、本当に悪いところがみあたりませんでした。
攻略する度、タイトル画面と曲が直前に攻略したキャラ仕様になるのがほんのり感慨を覚えさせてくれてグッド。
だからこそ、プレイ後に自分がこんなにも感動していない理由がすぐにわからなかったのです。

 

もちろんそう言うからには、きちんとそこの理由を見つけることができました。
ではどこに問題があったのか……演出です。
e-moteやグラフィックなど、一見してリッチで華美なルックが演出の下手さを気づきにくくさせていたのです。
だから悪くないはずなのに、満足できない。
思い返せば、クライマックスでは展開として盛り上がっているはずの場面でも、曲やCGで盛り上げるようなことはせずにそれまでの日常パートと同じ流れのまま抑揚も無く過ぎ去っていきました。
e-moteというシステムも、動きすぎていてむしろ絵を強引にうねうねさせた違和感ばかりが前面に押し出されている。リミテッドアニメのように、最小限の動きだけを見せるべきだった。
――などなど、実にもったいない部分の失点が作品全体の印象を低い位置へと下げてしまっているように思えました。

 

ゆえに、約束されていた勝利を逃してしまったゲーム、というのが自分の感想です。

映画『ちはやふる』 上の句 感想

ちはやふる

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いつも映画館に行けば基本的におっさんしかいないので、今回も何も思わずにおっさんルームへと足を踏み入れたつもりでした。
しかし、自分は忘れていたのです。ちはやふるは原作が少女漫画であることを。
なので客層も大半が女性ばっかり。男性はカップル連れしかいなほどの女性率。
本編の前に流れる映画予告には恋愛映画に継ぐ恋愛映画。
ああ、来る映画を間違えたか。この段階で早くも来たことを後悔させられました。
予告で出て来た恋愛映画の地味系女子とされる主人公達の外見がいちいち可愛すぎて、作品とは関係無いところでげんなり。日本の役者ありきで制作するスタイルいい加減どうにかならないかなぁ……。

 

とまぁ、ずいぶんテンションが下がったところで本編。
ひっくり返されました。
めっちゃくちゃよかったです。
邦画を観るのはバクマン以来で、バクマンの出来が相当よかっただけに今作はかなりハードルを下げた状態での鑑賞を心がけていたのですが、OPの段階でそんな見下した態度に反省せざるを得なくなりました。

 

まず魅せられるのは平安の絵をモチーフにした雅なアニメーション演出。手描きエフェクトの気持ちいい動きがこの作品全体のクオリティを示すかのように、鑑賞者を作中へと誘ってくれます。
実写カットの合間に差し込まれるアニメーションも上手く世界観を捕らえられていて自然に受け入れることができ、豊かな感情表現が成されていました。

 

話は二時間で五人分の葛藤を上手くまとめています。
中でも上の句で主人公的な立ち回りをしていたのは、太一でしょう。
原作でもおなじみの、太一君は運が悪い話。
その運が悪い話は、原作ではキャラ付けの一環でしか無かったのに対して映画ではそこにもしっかりとした理由付けがされていました。しかも、原作にもあったエピソードが原因であるとしているため、原作ファンでも納得のいく仕上がりに。
おかげでかるたの神様に見放された彼が、運命戦で自分が勝つための活路を見いだしていく流れの熱いこと熱いこと。
これは原作の頃からの個人的な思い入れになりますが、やっぱり太一を取り巻く葛藤がいちいち胸に突き刺さる!

 

広瀬すずという配役はネットでもよく話題になるため、キャラとして没入させてくれるかどうかという点で非常に不安だったのですが、これもまた失礼いたしましたの一言。
まんま千早でした。振る舞いはもちろんのこと、声のトーンまでアニメそっくり。一体どれだけ原作を研究したのかと思わず感心してしまいました。
広瀬すず以外の役者さんたちも、一部の改変を除いて原作のキャラクターの姿を生き写しにしたかのようにピタッと当てはまっており、観ていてそういった部分のひっかかりは一切ありません。
中でも奏役の子はすばらしい。演技力も抜群ですが、外見の普通っぽさが奏役としてのポテンシャルを遺憾なく発揮できており、まるで奏が現実に舞い降りたかのように錯覚してしまうほど。

 

本編に感動し、お腹いっぱいになってEDに差し掛かったところでずっこけました。
なんでPerfume!?
作中の雅な演出に心を溶かされた末に待っていたものが電子音では台無しです!
もっと他に選択肢無かったのでしょうか……それとも、これもまた大人の事情でしょうか。

 

ひとまずエンディングは置いておき、
映画の尺という問題を解決するために冗長なシーンがないことが幸を成して、漫画よりもすっきり触れやすい作品になったように見受けられました。
名作と言っても差し支えない類いの映画ではないかというのが自分の感想となります。

アーロと少年 感想

アーロと少年

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記念すべき百記事目となります! たしか、ブログの継続期間もちょうど一年を迎えようとすることろだったような……そこへピクサー作品を持ってこれたのは中々タイミングがよかったです(・∀・)

あらすじ

六千五百万年前、地球に近づいてきた隕石が衝突すること無く通り過ぎ、恐竜たちが絶滅を免れた世界。それから数百万年後、彼らは言葉や文化を持つようになっていた。
アパトサウルスの少年アーロは、兄や姉と比べて小柄で臆病なのをからかわれていた。
ある日、アーロは事故で川に流され、見知らぬ土地で目を覚ました。そこで原始人の少年・スポットと出会う。

 

感想

非常によかったです。

 

今作は親を死なせてしまうレベルの臆病者が恐怖を受け入れていく成長物語。
なんでアーロが恐怖を抱いたのか、アーロがさらなる恐怖環境に身を置かれてしまう、恐怖を乗り越えるきっかけたる相棒との出会い、相棒と行動していく中で恐怖との向き合い方を身につけていく、そして相棒のピンチに恐怖完全攻略――
そのステップを丁寧に一つ一つ踏んでくれているため、飲み込みやすいです。

 

最後にアーロにとっての恐怖の象徴であった雷を、相棒たるスポットを助けるために乗り越えるシーンなんかは、恐怖的な成長だけでなくそれまで直視してこなかったスポットという一つの人格との向き合い方の成長にもつながっていて、浅さを感じさせない巧みさを見せつけてくれました。熱かった!

 

必要な要素流れを無駄なく綺麗にはめ込んできたプロットはただただ美しいの一言。
演出一つ取ってもとても映画的で、シーンを観ているだけでため息が漏れました。
例えばスポットがアーロの手を離れて人間家族に迎え入れられたところ。それまでずっと四足歩行で猿というか犬のようだったスポットが、大人に手を引かれて二足立ちになっていく変化などは二人の成長と別れをこれでもかと突きつけられ、感涙ものでした。

 

個人的に面白いなと思ったのは、恐竜達が現代の人間ポジションな世界であるため、人間が前述したような犬などの動物的扱いを受けているところです。
一昔前にやっていた、動物が人間の動物園を見に行くCMを思い出しますね。

 

しいて難点をあげるとすれば、フックがなさすぎて割と観ようと腰を据えるところまでに体力を使うところでしょうか……
ポスト人間に恐竜が、ポストペットに人間が、というちぐはぐ模様を押し出せばもうちょい興味の引ける宣伝になったのかなぁと愚考する次第です。

 

本編は文句なしの傑作だと思います。
ショートムービーも明快でいい作品でした。

ノラと皇女と野良猫ハート 感想

ノラと皇女と野良猫ハート

 

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前回出来なかった分、今週末にもう一つ記事を上げる予定です。

 

あらすじ

男子学生・反田ノラはある春の日の登校中、一人の美しい少女の姿を目にする。
パトリシアという名のその少女は冥界のの皇女であり、ノラたちの済む地上の生物を滅ぼすためにやってきたのだった。その日の昼、ノラはある出来事からパトリシアとキスをしてしまう。
するとノラの身体は一匹の黒猫に。パトリシアはノラに無自覚な恋心を抱くようになってしまった。
人と人でない者の間で揺れ動く恋愛ブレイブストーリー

 

感想

いいエロゲーでした。
従来、日常の中にファンタジーなどの要素を盛り込んだ世界観を扱ったエロゲーというのは、大半が最初からご都合主義に走りがちでうんざりさせられます。
今作では童話のような語り口で進む演出が、日常の中で唐突に現れた魔族という存在をメルヘン的に位置づけ、「お、どうなるんだろう?」と自分を作中世界へと違和感なく引き込んでくれました。
おかげで非人道的な種族だったヒロインが人間性を知っていくというありがちなプロットも、まったく新しい物語のような楽しみ方をすることができ、満足です。
日常描写などの飽きさせないキレがありますが、さらに素晴らしいと思ったのは曲。
クラシックの名曲をアレンジしたBGMが、童話的な表現と見事にマッチしていて攻略後も曲単体で何度も聞いてしまうほどにはまり込んでしまいました。
あと純愛ものながらエロシーンがエロいのも個人的に高ポイント。

 

でも名作ではありません。名作とするにはあまりにもおざなりすぎます。
ではどこがダメなのか。ずばり、キャラを取り巻く設定のほぼすべてごまかして乗り切ろうとしているところです。
なぜ人間のヒロインが魔族としての才能を持っているのか、天界とは何なのか、そういったヒロインのルーツの扱いが適当で、なぜかダイジェストだったり口伝で終わらせてしまうのです。
この雑さが大作感をぶちこわしている!
せっかく二年もかけて作り、見事な曲やルックなどの演出を実現できているのにどうしてそんなことを……と歯がゆく思います。

 

中でも特にこの作品の価値を大きく損ねているのは、メインルートで主人公が大きな決断と実行をしたのに、まるで夢落ちのような強引さで迎えるハッピーエンド展開。
そんな設定作中で全く無かったよね? といった要素で解決してしまいます。クライマックスで覚えた感動を汚されたかのようないらだちが沸きました。
人の時間の中で生きていきたいヒロインと、そのヒロインの幸せを願って魔族に身を落とす主人公の恋愛を描くのであればご都合主義で濁さずにしっかり描ききって欲しかった。
有力な魔族へと成長を遂げた主人公が記憶を失うくらいの時間をかけて、時間を飛び越える魔法を覚えて帰ってきた、ぐらいのバランスでも十分シリアスに成り立つでしょう。
途中までは間違いなく感動出来ていた作品だけに本当にもったいない。

 

とはいえ、そうした雑な部分以外はとてもよくできているため、いいエロゲーだったなぁというのが自分の感想です。

ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン 感想

ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン

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1~3巻まとめての感想となります。
ソードアート・オンライン』の本編には居ない、別のキャラ達によって紡がれる物語。
本編作品を読んでいなくても楽しめます。

 

まず言えるのは、萌えではないということ。
今作の舞台となる世界がガンゲイルオンラインなる硬派なオンラインゲームであることもそうですが、それを取り巻くキャラ達が女性を含めてむさく暑苦しい。
よく男キャラの描写が美少年からおっさんまでと幅広くされることはあれど、女性キャラが美少女以外描かれることはそうそうありません。しかし今作ではそれをやっている。
おかげで美少女美術館からの解放が成されており、作中リアリティをグッと高められたような印象です。

 

前述に本編を読んでいなくてもとありますが、だからといってソードアートオンラインの系譜でやる必要のない類いの物かと言えば、そういうわけでもありません。
ソードアートオンラインという物語で主軸とも言える題材はやはりデスゲーム。
その本編を賑わせたデスゲームという題材を、本編の問題が解決したからこそ起こりうるかもしれない設定で、見事に平和な世界でのデスゲームを成立させています。
ソードアートオンラインのオルタナティブの名に恥じない、作品となってました。

 

読了後の感覚としては、ソードアートオンラインというよりもアクセルワールドに近いです。
今作の目的としてはひっそりと行われるデスゲーム阻止にあれど、基本的に登場人物達はガンゲイルオンラインというゲームをスポーツマンシップに則って前向きに戦うため、一つ一つの戦闘が明るくさわやかで気持ちよく読み込めます。
キャラ達の戦闘スタイルそれぞれに強い個性があり、その戦い方が何よりのキャラ立てになっているのもまた面白い。おかげで数多居る登場人物達の見分けがはっきりと付けられました。

 

総評としては、スカッとさわやかな燃えを体験できる良作というのが自分の感想です。

異世界食堂 感想

異世界食堂

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ストイックなほどコンセプトに忠実な作品です。
異世界の人々が日本で運営する主人公の料理屋に迷い込み、その料理の味に驚き感動するという流れ。これを各話ごとにやりなおしている作りとなっている短編集。

 

同じプロットを用いて、迷い込むキャラの立場、種族の違いだけでここまで多彩な話を表現できていると言うことに脱帽しました。
まるで週刊連載の漫画を読んでいるかのような感覚。しかもあくまで短編一辺倒で、次にまたぐような話がありません。
食べ物の描写が非常にしっかりしていて、味が想像しながら読み進めることができるという点も素晴らしい。

 

どうしても抱いてしまう物足りなさは、一度登場したキャラがその後の話で中心に来ることがなく、話が切り替わる毎に毎回キャラ達の積み立てた感動をリセットされる印象を植え付けられてしまう点。
コンセプトにストイックすぎて、せっかくの魅力的なキャラクター達が食堂を運営する主人公との関係に発展がなく、もどかしさを覚えてしまいます。


例えば今作は店に訪れる人々の間にも、異世界の中での敵対関係やら何やらの複雑な事情が渦巻いているのが面白い。
しかし、彼らは暗黙の了解で店内での敵対行動は避けるようにしてしまっている。このように、異常なまでのストイックさを持って物語を転がすような種をも殺しにかかる傾向があるわけです。
せっかく異世界という題材を扱うのであれば、主人公周りで何らかの発展が見たいと願ってしまう。
コンセプトを殺してしまうような転がし方は問題かも知れませんが、コンセプトをより発展させられる転がし方があるのであれば、それに身を任せてみるべきでは無いかと愚考する次第です。ずっと現状維持ではさすがにつまらないです。

 

やや足りない、というのが自分の感想です。