にわオタレビューブログ

にわかなオタクがアニメ、ラノベ、エロゲーなどのレビューをつづります。まったく関係ないこともつづります。

ゴブリンスレイヤー 感想

ゴブリンスレイヤー

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とてもすばらしかったです。
ファンタジーという題材を扱っているのに、王道でもなければ最強設定でも最弱設定でも無い。
では中途半端なのかと言えばそれも違う。
平凡な男がただ一つのことを無骨にやり遂げる、プロフェッショナルの姿が描かれていました。

 

ゴブリンスレイヤーを名乗る主人公が生業としているのは、世界最弱の魔獣・ゴブリンを狩り続けることのみ。
ゴブリンは確かに最弱ではあるが、人数は多く、人をさらい、辱め、無残に殺すような存在で、冒険者から見れば報酬も少ないため人気の無い案件。
なるほど、確かに伝説のドラゴンを倒す勇者よりも頻繁に村を襲ってくるゴブリンを積極的に刈り尽くす凡人の方が正しく正義の味方をしている。
今まで輝かしい冒険活劇の裏側に隠れていた、もっと村人達にとって正しい形での英雄像を見せつけられました。

 

最強でも最弱でもない、『最優』を題材とした今作は今後のファンタジーのあり方にもう一つの道筋を示してくれたように思える新機軸の作品。

今後のファンタジー作品にどんな最優の題材が扱われていくのか、楽しみです。

この素晴らしい世界に祝福を! 感想

この素晴らしい世界に祝福を!

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あらすじ

事故で命を落とした少年・佐藤和真は、天界で女神を名乗る少女アクアに異世界への転生を持ちかけられる。
異世界へ望む物を一つだけ持って行けるという特典で勧誘するアクアだったが、態度があまりにも和真をバカにしていたため、和真は激怒。
アクアを『持って行く物』として指定し、道連れという形で共に異世界へと転生されるのであった。

 

感想

面白いです。
本作ではいわゆる異世界ものにありがちな、現実ではぱっとしないけど異世界で大活躍というテンプレートから外れています。
というより、外すところに面白さ――コンセプトを見いだしています。
物語性は一切ありません。
何巻になってもずっと最初の街にとどまり続けてポンコツヒロインたちに振り回される日々を、王道を外していくテンポのいいギャグを通して綴られていくばかり。
一応活躍をするときもあるものの、そこに他の異世界ものほどの承認欲求への刺激はなく、あくまで一つのお話をまとめるためのパーツでしかありません。
でも、それがいい……!
まるで週刊連載のギャグ漫画を読んでいるかのようなライトさと面白さへの安心感があり、原作を触れるときもアニメに触れるときも気負うこと無く読み始めることができます。

 

問題点というか、これは大人の事情だったりすると思うのですが……
ヒロイン達がただのネタキャラ以上に思うところがなく、可愛くないです。
といってもヒロインの可愛くなさが問題というわけではなく、巻を重ねていく中でその可愛くないヒロイン達と変に恋愛要素を盛り込んでいくところがノイズのように思えるのです。
キャラをギャグ特化させているため、恋愛したいようなキャラに仕上がっている。ならラブ要素の一切を排除してどこまでもコメディを貫き通すべきでは無いかというのが自分が今作に抱えた唯一の不満点です。

本作はラブコメという言葉から外れた、純然たるコメディラノベだというのが自分の感想です。

コードギアス 亡国のアキト 最終章『愛シキモノタチヘ 』 感想

コードギアス 亡国のアキト 最終章『愛シキモノタチヘ 』

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あらすじ

ユキヤの放った爆弾によりユーロ・ブリタニア軍を三分の一に減らすことは出来たが、依然としてzero部隊の不利な状況は変わらない。
ユーロ・ブリタニアによるヴァイスボルフ城への攻撃が始まる最中、アキトは兄との最後の戦いを決意する。

 

感想

最近映像媒体で観るものがいちいちひどすぎます。年始めに観た『傷物語』で得た感動をこれでもかと削いでくるので、たまったものではありません。
などという出だしで始めたからには今作ももちろんひどかったと思ったわけです。

 

さて、亡国のアキトシリーズの魅力といえばやはり3DCGによる迫力ある戦闘シーンです。
今作でもしっかりと作られている……ものの、いつもよりその魅力は目減りしている印象がありました。
原因としてはアレクサンダーが新型になったこと。
いつものアレクサンダーは、武器の短さが幸を成して動きに工夫を加えなければ相手にダメージを与えることができませんでした。必然的に変態機動が生まれ、その気持ち悪さに心躍らされるのが毎回の魅力だったのです。
しかし今回そのアレクサンダーが新型になったことで武器も普通の剣になり、絵面としてありがちな普通のものになってしまいました。
ここまでがっかり来るバージョンアップもなかなか無いでしょう。
魅力を語っていたはずがいつの間に……。

 

最終章を一言で表すなら『エヴァンゲリオンを目指して失敗した作品』。
ギアスの神秘性をひもとくにあたって、何らかの回答を示そうとした心意気はいいのですが、繋がりのかけらもない適当に考えました感満載の設定の雨あられ。
キャラ達の心理の変化も前作動揺に宗教じみていて気持ち悪い。
終盤の付け足した感あふれる敵キャラ回収。
主人公達の行き着いた場所の不幸せさ。

 

……なんだこれ。どこを取っても納得できません。

ザ・ウォーク 感想

ザ・ウォーク

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あらすじ

時は1974年。
どこにでも綱を張り、渡ることを生きがいとしているフランスの青年・フィリップは、ある日ニューヨークでワールドトレードセンターが建設された事を知る。
高くそびえる双子のビルにたちまち魅了されるフィリップは、その二つのビルにワイヤーをかけて渡ることを夢に見た。

 

感想

単純に面白くなかったです。
当事者にしかわからないロマンを追い求める男の話――少し前の作品になりますが、『風立ちぬ』を彷彿とさせてくれますね。
こうした作品は描かれている人物の魂が込められているため、観ていて非常に熱く燃え上がることができ、個人的に大好物です。
その上で面白くなかったと評したのは、こうした題材を表現するにあたって作中で見せるべきものが何一つとして見せられていない点にありました。

 

一人の男の魂をモチーフにしているのに、全く熱くなれない。なぜなのか。
まず単純に、フィリップが綱渡りに夢中になっている理由がわからないところが問題です。
一応過去回想で子供の頃に綱渡りを観ているシーンが差し込まれているわけですが、そのシーンは本当にただ綱渡りをしている人を見ている以外の何物でもないカットで、感じ入るものが何もありません。「え? 今の何に惹かれたの?」といった具合に作品の根本にまったく納得いかない状態で話が進んでいきます。
当時のフィリップが何に不満を持っていたのか。この部分が無いと、『綱渡りしている人を見てるフィリップ』が何に惹かれたのかをきちんと説明できていないように思われます。

 

フィリップが綱渡りの何に夢中になっているのかがわからない。
であるが故に、必然的に周囲の仲間達がフィリップの何に惹かれて協力者となってくれているのかもまったく見えてきません。
あれだけ理不尽を働かれて、それを許してなお最後まで手伝いきると言うのは並大抵の精神力ではできないことです。
それなのにフィリップの後を追う彼らの姿は怪しい宗教の信者のようで、観ていて気持ち悪かったです。

 

さて。話として駄目な今作ですが、絵としてはどうなのでしょうか。
3Dまで用いた大迫力を歌い、IMAXを引っさげての公開。嫌が応でも期待は高まります。
そして落とされます。もう本当に……ゴミみたいなシーンでした。
高いビルの上を細い一本のワイヤーで渡っているという緊迫感に満ちているはずのシーンなのに、仏のように心穏やかに観れてしまったんです。
びっくりするくらい迫力に乏しい。
ワイヤーを渡るフィリップと、それを見守る衆人観衆を見せているだけの平坦な絵の連続。前述でもあったように、ここでもやっぱり『綱渡りをしている人を見ているだけ』以外の何物でも無い。まるで事実のみを綴った説明文でも読んでいるかのような錯覚を覚えてしまいました。

 

実話ベースだから仕方ないところはあるにしても、今作の駄目さは実話がどうなどと言えるレベルを遙かに超越しています。
何もかもが下手。ザ・金ドブ作品です。

恋は雨上がりのように 感想

恋は雨上がりのように

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あらすじ

女子高生・橘あきらはアルバイト先の店長・45歳の近藤正己に想いを寄せている。自他共に認めるさえない男の近藤だが、あきらはそんな彼の魅力を『自分だけのもの』として、旨に秘めた恋心を募らせていた。
そんなある日、アルバイト中に起こったとある出来事をきっかけに、あきらの秘めたる恋心は大きく動き出していく。

 

感想

更新遅れました、申し訳ありません。

 

さて、今作は面白くも惜しい作品です。
やっていること自体は美少女がダメダメなおっさんに惚れて、そのちぐはぐさを楽しむようなたぐいのもの。
最近では『おじさんとマシュマロ』がアニメ化してそこそこの好評を得られていたりと、安定した面白さを持っているジャンルですね。
記号的なおじさんと記号的な美少女を配置するだけで十分楽しめるは楽しめるのですが、今作ならでははそこの変革にあります。
おじさんは円形脱毛症や他の人に嫌われるほどの加齢臭、さらにはバツイチ子持ちと現実的に中年男の悪いところとされているところをこれでもかと描写して見せつけてきます。
だからこそ、そんなリアルにいやな部分にときめく美少女のいびつさが一層強く際立っているのです。
こういう作り方で新しい魅力が生まれるのであれば、他にも色々とできそうですよね。

 

しかしせっかく一巻で捕まれたハートは、二巻であえなく離されてしまうことになります。
女子高生がバイト先のチャラ男にアプローチをかけられるという流れ。
シチュエーションとしてはありだとは思うのですが、おっさんと美少女のすれ違いを見せるべき今作においてこのチャラ男はまったく効果を発揮していません。
チャラ男は割といい歳をした大人で、女子高生の特殊な性癖にも気づいている。その上でずるがしこく立ち回るために、ただただドロドロとした普通の恋愛物語的に堕ちていくだけ。
そんなものが見たくて今作の二巻を手に取ったわけではありません。
リアルを意識しすぎて、無駄なシリアスが入ったような印象です。

 

というわけで、『おじさんとマシュマロ』と同じ成功と、同じ失敗をしている惜しい作品だったなぁというのが自分の感想となります。

りゅうおうのおしごと! 2 感想

りゅうおうのおしごと! 2

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あらすじ

あいを正式な弟子に迎えた八一は、ある日永世名人から新たな弟子をお願いされる。
お願いされたのはなんと再び女子小学生。あいを迎えたばかりで新たな弟子を取ることを渋る八一だったが、
あいの成長にライバルの存在が必要であったこと、そして何より新たな弟子希望者の才気に惹かれて
一時的な弟子入りを受け入れるのであった。

 

感想

大変すばらしかったです!
女子小学生という本来納得しがたいヒロインを、見事にヒロインとして納得できるところまで落とし込めていた快作ということで前巻で骨抜きにされてしまった身の上ではありますが、だからこそ次の巻であの衝撃を超えることができるのかという不安と共に読み始めた今作。
しかしそんな不安は読み進めていく中で、あっさりと霧散させられます。

 

前巻では弟子になるまでのお話が終わったため、必然的に今巻では弟子になったあいが直面する問題についての題材となります。
八一には銀子がいたように、あいがしっかりと成長していくにはライバルが必要。
しかし、あいと同等の才気を持った同年代の存在など今作に登場させようがない。したとして、あいの才気にしびれていた読者にとってそんなのはただいらつかせるだけの要素にすぎないのではないのか。
――いや、そうならない手段が一つある……! そう、それが主人公・八一にあいと同等の魅力と強さを持ったもう一人の弟子を取らせるということ。
ライバルも愛すべき身内なのです。だから読者たちは、そのライバルにも愛を持って接することができるわけですね。

 

お話はライバルキャラの成長物語が主軸になっていて、それ自体はかなり王道的展開。しかしその王道展開の目的が、あいに対抗しうるライバルの育成というわけですから、読んでるだけでその先に待ち受けるであろう『あいVSライバル』の図が楽しみでついついページをめくる手が止まらなくなりました。

 

それに伴って、前回は竜王である割に情けない印象ばかりが目立った八一が今回はしっかりと将棋で活躍してくれるところもまた素晴らしい。
一番盛り上がるポイントだと思われた対局のさらに先に待っていたまさかの対局が現れたときには興奮が最高潮に達します。

 

因縁を大量にちりばめてこれでもかと興奮を盛り込んでくる豪腕、あっぱれとしか言い様がありません、
前巻に劣らぬ快作となっておりました。

傷物語I 鉄血篇 感想

傷物語I 鉄血篇

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あらすじ

ぼっち高校生・阿良々木暦はある日、瀕死の吸血鬼・キスショットに出会った。
回復のため、泣きながら自らの血を求めるキスショットを前に悩む暦。自らを犠牲にして助けることを決意する。
アニメシリーズ『化物語』の前日譚。

 

感想

すごいものを観ました。

 

面白い面白くないではなく、すごいんです。
日常シーンの細かな動作、今敏高畑勲を彷彿とさせるような工夫しかない映像の連続。
これが深夜アニメの劇場版だなんて信じられません。まるでアート作品でも観ているかのような気分です。
それでいて所々にガイナックスのような勢いのある絵作りもバンバンと差し込まれてきて、アニメのいいところをこれでもかと詰め込まれている印象。映画かアニメが好きな人であれば間違いなくお腹いっぱいになること間違いなしです。

 

話としては序章も序章、三部作の物語に登場するキャラが一通りそろったというところで終わってしまったために、そもそも面白いかどうかを問う段階にはありません。
それでも終始退屈さとは無縁でいられる圧倒的な絵作りには、やはり脱帽の一言を添えたくなってしまいます。

 

そんな今作にも難点が二点あります。
一つは最初の日常パートの描写方法までもがあまりにも独特すぎて、吸血鬼に出会ったという非日常の入り口にあまり衝撃を受けないという点。
もう一つヒロインたちの頬が常に赤く染まっていて、彼女たちが当時暦に対してどんな感情を抱いていたのか、機微がまったくもって読み取りづらいという点。
そうした演出の雑さが少し残念に思えます。

 

夏の続編も実に楽しみに思えました。
新年早々に現れた、観なくてはいけない映画となっております。