にわオタレビューブログ

にわかなオタクがアニメ、ラノベ、エロゲーなどのレビューをつづります。まったく関係ないこともつづります。

辺境の老騎士 感想

辺境の老騎士

f:id:saradax:20150725131008j:plain

あらすじ

齢六十になる老騎士・バルトは四代つかえたテルシア家からの引退を機に旅に出る。
四十年以上日陰者として生きてきた主に、広い世界の中で見た光景を手紙にしたためようと考えての旅だった。
行く先々の村や町で、人民の命が悪党によって危険にさらされているところに遭遇するバルト。
彼は老いた身の上惜しい命ではない、と一人粗末な剣を手に数多の悪党へと立ち向かっていくのであった。
死にゆくだけのはずだった老騎士が紡ぐ英雄譚。

 

 

感想

くさい! くさい! とは思いながらも、主人公が無双して人心を掌握していく様が描かれているお話というのはやはり一定以上の魅力を感じます。
とはいえ、さすがに『すごい才能や経歴を持った少年あるいは青年主人公が大活躍』というのは飽きました。
しかし『よくわからないものへの恐怖』という人の本能を思えば、読者の分身である主人公に深みがあっても得られるカタルシスはただ一つ――承認されることだけ。意味がありません。
無双するお話にどうしても伴ってしまう臭みはどうすれば消えるのか。その命題に対してのまた新しい回答が今作で提示されました。
それが老人であること。


年ですからもうすぐ死にます。いつまでも君臨はしていられません。どんなに特異性を持っても時間制限があります。
年ですから今までたくさんの経験をしています。無双できるだけの、人を惹きつけるだけの理由がこれ以上ないくらいあります。
ただ老人というだけでこんなにも説得力に必要なものが用意できてしまいます。
もちろんいいとこずくめというわけではなく、年なのでヒロインと恋愛するようなことはありません。ラノベなのに。それどころか登場人物の九割以上がおっさんという有様。
でも、だからこそ湧いてくるまた違った魅力が光ります。
衰えていく身体。長年連れ添った相棒との別れ。
無双ものを読んでいるはずなのに、文学的なイラストと相成って童話でも読んでいるかのような錯覚に陥り、ライトノベルという枠を超えたまっとうな英雄譚を体験していることに気づかされました。
老いている主人公だからこそ見える魅力が体験できる作品です。