にわオタレビューブログ

にわかなオタクがアニメ、ラノベ、エロゲーなどのレビューをつづります。まったく関係ないこともつづります。

なついろレシピ 感想

なついろレシピ

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女にだらしない父親を持った主人公は、ある日突然腹違いの妹からの手紙によってその存在を初めて知る。
彼女は最近天涯孤独になってしまったらしい。しかし、父親はその責任を取れない状況。
父親の代わりに責任を取るべく、妹のいる田舎へと出向いて彼女にとって大切な食堂の運営していくお話。

 

 

やはりこのゲームの面白さを語る上では、中心となっているキャラクターである主人公と腹違いの妹・八重原柚を外せません。
腹違いの妹を助けに行く……ありそうながらもあまり見ない、魅かれる展開です。
ところが実はこの柚というヒロイン、腹違いの妹として冒頭からユーザーをグッとひきつけておきながらすぐにそれは違うことが判明しました。
『えっ、せっかく魅かれた設定だったのにそんなすぐになくして説得力とか大丈夫かな?』などの言葉がちらついたりしそうなものです。
しかし、そんなことにはなりません。

 

妹ではない赤の他人であるということがすぐに判明しても、このお話にさめるといったことはなく、序盤ながらも柚を放ってはおけないことが納得できるくらいに彼女の環境が演出されていて、もう無条件に『そうだよね!』と受け入れることができます。
では、このお話は全体を通してどういったものになっていくのか。なにが語られているのか。
ずばり『赤の他人ではあるけど、かわいそうな境遇にある女の子を助けるお話』です。
なるほど、最初からこれを出されても今のようなプレイ完了後に得られる気持ちよさは小さかったかもしれません。
最初に腹違いの妹設定を持ってくることで、こっちはひたすらに柚を助けたい一心でクリックを進めざるを得ない状況に落とし込まれているんです。
柚に感情移入させられた時点でこのゲームは『いい作品』以外の何物でもないでしょう。

 

柚が求めているのは『家族』でした。
でも主人公・杜丘岳史は赤の他人。彼女を助けるためにはその事実を柚からも周囲からも隠しながら、彼女にとって大切な場所である食堂を再開させる必要がある。
難題ながらも岳史は見事にやり遂げました。
そんな岳史に満たされ、恋心を抱いた柚は一人彼が兄ではないことを知るものの、それを岳史に悟られれば出ていかれるかもしれないという恐怖を持つことになります。
恋心と孤独のはざまで揺れ動く柚。彼女の不可解な言動に振り回される岳史。
この『すれ違い』こそが今作の魅力です。

 

 

おっ、と思わされたのは二人がすれ違いの中で解決に向かう道筋。
従来の作品であれば、二人の中で決着がつけば細かいところはぶっとばしてあとは周囲に明かしてもあっさりと受け入れられるところでしょう。
今作でも受け入れられるところはそうなのですが、受け入れられるまでの間に村の有力者に相談を持ち掛けたりと根回しをしています。
こうした細かい部分への気遣いを忘れないところが、二人の関係の決着をより納得のできる感動を得られる流れへと導いてくれました。
他の作品でもご都合展開が納得できるだけの組み立てを忘れないでほしいものですよね。

 

 

上記は柚ルートのみについて書いたものですが、他ルートでは早蕨こごみが気に入りました。
言い方は悪いかもですが『自己犠牲の人』である岳史を、『自己犠牲』で助けてくれるのです。
そしてそれは『自己犠牲』ではなく『愛』なのだから申し訳なさなど抱くことなく受け取れ、というのが彼女の理論。
正直『自己犠牲』を持ち出されるとキャラに尊さを感じて否が応でもグッとひきつけられてしまうので、いい意味で困ります。
とにもかくにも今作は面白かったです。良作でした。

 

 

ついでに調べてみると『遥かに仰ぎ、麗しの』を担当した方がディレクターさんなんですね。そりゃあいい演出だし、面白いわけだ!