にわオタレビューブログ

にわかなオタクがアニメ、ラノベ、エロゲーなどのレビューをつづります。まったく関係ないこともつづります。

凪のあすから 感想

凪のあすから

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あらすじ

陸と海中の両方に人が住む世界。
海の世界の少年・矢島光は幼馴染三人と共に陸の中学に通うことになる。
陸の上で知り合った少年・木原紡が光の恋している幼馴染の一人・向井戸まなかと仲を深めていく様子にヤキモキする光。
元々陸の人間が嫌いだった彼はますますその感情を重ねていくばかり。
しかし、陸で暮らしていた姉と陸に住む男の結婚騒動をきっかけに、光は自分の抱いてきた海の人間らしい価値観に疑問を持つようになっていく。

 

 

感想

田舎町の素朴な少年少女の想いの抱き方がとても不器用なところが可愛らしく、魅力的でした。
そうしたリアルさがヒロインたちのかわいさも相成って、その恋心の行方がどうなっていくのかを見届けたくなってしまってほいほいと最後まで観てしまった次第です。

が、自分はこの作品をあまり好きにはなれませんでした。
全二十四話観てしまうくらいですから、もちろん基本的に楽しんでいたわけですが……。

 

ではなぜ好きになれないのかというと、作中で提示されているテーマ・メッセージが大きな原因となっています。
『運命は自分で切り開くものなんだ』
実に素晴らしいテーマだと思います。実際に光は最初にどうしようもないと思われていた女の子との関係を、最初っから最後まであがきまくることで最終的に手に入れることができている。
じゃあいいじゃないか……いや、まったくよくありません。

 

問題は光以外の人々の行く末。
彼女たちはみんな自分の好きだった人間とは結ばれることなく、諦めざるを得ない状況で決着してしまうことになっています。ほとんどは光のわがままな振る舞いのせいで。
運命を自分で切り開く図よりも、運命に逆らえなかった人たちの図の方が多いし、強烈にインパクトがあるんです。もうテーマと真反対。ギャグですよこれは。

 

光に思いを寄せる女の子というのが思いのほかたくさんいて、そのどれもが健気で一途で尊い娘ばかり。それこそ主人公を差し置いてがんばれと応援してしまうくらいに。
そんな娘たちを、光は二十四話の中で終始無自覚に洒落にならないレベルで傷つけまくり、観ていてただただ殺意ばかりが芽生えてしまいます。
そして、光が好きだと言ってやまない『まなか』というメインヒロインの少女は、最後に光と結ばれていいと思えるくらいのものを作中でまったく提示できていません。
それどころか他の男が好きなのではないかという真実と言っても差し支えないくらいなミスリード伏線が張られているという、まったくの逆効果演出にヘイトは貯まる一方です。


まなかは一度だけ光のために体と命を張ります。
こんなことをするくらいだから、光とまなかが結ばれるのは大縁談だよねみたいな位置づけの演出です。
でもそれは、それまでのキャラの振る舞い的に、光のためというより博愛の精神から来た行動以外のなにものでもない。
必要なのはそういう博愛主義的な行動じゃなくて、主人公への強い愛が感じられる演出です。
たとえば他の報われていない娘たちがそうであるように、光との関係性にヤキモキするだけ。それだけで納得できるはずなんです。
その上で、光の姉を命はって助けるという他の娘から一線を画すようなことをすれば、素直にまなかを一番応援してあげたくなって、結ばれたことに拍手を送りたいと思えたはず。
整理すると……主人公には殺意が芽生え、メインヒロインはどうでもよく、尊いサブヒロインたちに共感した結果およそ最悪なまとまり方をした、ということです。
感情移入先のことをまるで考えられていないんですよね。

 

 

一部には『実は俺五年前からお前のことが……』『私もずっとあいつのこと好きっていってたけど実は……』みたいな女の子が潜在的にそれを望んでいたかのような結ばれ方をするカップルがいます。
これは、マジで、ふざけんなと思いました。
後出しじゃんけんにもほどがあります。こんなことがまかり通ったらなんでもありじゃないですか。
思うに、さすがに報われなさすぎる女の子への救済処置のようなものかもしれません。
強引な理由付けをしてまで、パズルのように男女のセットを作って『救済しました』という形にしたかった的な。
でも正直、最初から光との関係を応援してきた身としては、振られた上につけこまれた、と二重にその女の子が可哀想としか思えなくて、なんともやるせない気持ちにさせられました。

 

 

物語の最後にしっかり決着がつくのはとてもいいことだとは思いますが、このパターンでサブヒロインが魅力的すぎるのは弊害になってしまうのかと感心しました。
この作品がいいものになるには、観ている側が光を不器用ながらも好きになれるような好人物にして、まなかの余計なミスリード展開を入れずに光への一途な思いを抱かせることだったんじゃないでしょうか。

 


ぼろくそに叩きましたが、もちろん好きなところもあります。
最初に述べたこともそうですが、それ以上に途中の違う時間の流れを生きるという展開。
子供だった女の子が、ヒロインに昇格した瞬間の衝撃ときたらもう、しびれました。
本来であればSFで用いられそうな演出を日常とファンタジーを足して二で割ったような世界観の中でやるとは……。