にわオタレビューブログ

にわかなオタクがアニメ、ラノベ、エロゲーなどのレビューをつづります。まったく関係ないこともつづります。

ぼくの一人戦争 感想

ぼくの一人戦争

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毎週土日辺りに、と思っていたのですが今回はかなり早めの更新。
名作量産機であらせられる、るーずぼーいさんの新作。
大きな……それはもう大きな期待を持ってプレイしてみたわけですが、すごくいいところがあって、すごく悪いところもありました。
とはいえ、やや悪いところが多くて目立ちすぎる印象。

 

物語

情けない話になりますが、自分にはこの物語で主人公・蓮司氏が結局何を乗り越えて何を新しく手に入れたのかがさっぱりわかりませんでした。
そして彼の行動でライターさんがこの物語を通して何を言いたかったのかもさっぱりです。

というのも、物語が始まった段階と終わった段階で主人公を取り巻く環境がほぼ変化していません。内面的にも同じです。

この作品を良しとする人は中々居ないような気がします。


るーずぼーいさんは作中でもキャラに語らせている通り、物語はすべて『人間関係』に帰結するということをメゾットに執筆されています。
過去作の『車輪の国』もこれでもかと人間関係をぐっちゃぐっちゃにして、『自己犠牲』を持ってキャラを輝かせるという手段を取られていますね。
今作ではその『人間関係』を『擬人化』ならぬ、『擬世界観化』したような作品となっていて、ダイレクトにキャラたちの人間関係を壊しにかかっています。
この人からしか生まれない作品だなぁと実感させられました。


キャラクターたちがぐちゃぐちゃになった人間関係の中で輝く瞬間はさすがのるーずぼーいさん。圧巻の演出で魅せてくれました。
思わず涙ぐみそうになってしまいます。が、残念なことにメインヒロイン・るみ様だけは自分の力で何かを乗り越えることをしませんでした。
これは蓮司氏がこの娘を救うために自己犠牲の行為に出るためには仕方ないことなのかもしれませんが、それにしたってるみ様だけ自力で苦難を乗り越えることをしなかったら相対的に他のキャラよりも魅力的に思えなくなってしまのではないでしょうか。
一番輝かせるべきキャラを一番どうでもいいところに配置してしまっている印象が否めません。


残りの気になるところを文章として書いていてはきりがないので、箇条書きにします。

・プレイし始めてかなり進まないと、この物語の何に目を向ければいいのかわからなず不親切

・作中でかなり重要なポジションにいる元アイドルが結局のところ蓮司氏にとってなんだったのか
・このような世界観で作っているなら『会』をもっと深堀しないと色んな部分の説得力が薄くなってしまっている
・『会』の中で別人格になってしまっているのはどういった要因か
・終盤に蓮司は何を消費して友人たちの記憶を取り戻したのか
・みんなの記憶を取り戻す演出を二回連続でやっているところで興ざめ
・途中から駒を呼び出すためのポイントがおざなりになってしまっていて、終盤に再び文章に出てこられてもあまり思い入れがない
・車椅子キャラが立ち上がるという展開は前作でやっていて、ゲームを始めた段階でまず思っていたことだから正直これも興ざめ
・最後にるみ様の家族が実はいい人たちだったとわかる展開も、るみ様が自力で苦難を乗り越えられなかったダメ人間としての要素を強めてしまっていてまた興ざめ
今思い出せるのはこのくらいです。

 

キャラクター

 

あまり好きな物語ではありませんでしたが、お気に入りのキャラはばっちりいたりします。

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ずばり長門氏。
登場時はうさんくさく、途中は「もしかしていい人なのかも」と思わされ、最後にばっちり裏切ってくれる。
そんな法月メゾットをばっちりと受け継いでいるキャラです。

法月さんはしっかりと彼の悪性を自身で解説し、それでも色あせることのない悪役としての魅力を兼ね備えていた一方で、長門にあるのは明かされないことでただよう底しれなさ。しかし問題が一つありまして……物語全体にわたって明かされないことが多すぎて、作中は『底知れない』がインフラしています。そのため長門氏単体で見れば魅力的に思えても、総合的に見ればどうだろう……という感じがします。

それはそれとして、OPで夜空をバックにこちらを見下ろすカットの迫力にはしびれたものです。

 

総評

なんだかんだで最後までプレイできてしまうほどに文章も演出もすばらしいと思うのですが、ただただ構成がクソだと思いました。
まるで冨野監督作品の総集編でも見ているかのような錯覚に陥ります。
このゲームをやっている暇があるなら、構成もばっちりな『車輪の国』や『G戦場の魔王』をリプレイしましょう。

 

車輪の国、向日葵の少女(通常版)

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