四月は君の嘘 感想
四月は君の嘘
あらすじ
かつて数々のピアノコンクールで優勝していた神童・有馬公生は十四歳現在、精神的な理由でピアノが演奏できなくなっていた。
ある日、同い年のヴァイオリニスト・宮園かをりの個性的な演奏に魅せられる。
何を思ったのか公生をコンクールの伴走者として誘うかをり。演奏できないことに悩む公生だったが、かをりの伴走者として舞台に立つことを決意する。
感想
新年あけましておめでとうございます。
今年もたくさんの物語に触れて感想を綴っていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、感想です。
大変すばらしかったです。
尾田栄一郎氏も言っていた通り、特筆すべきは演奏シーンでしょう。
演奏という場所をそれまでの日常内での葛藤の答え合わせをするためだけではなく、演奏の中で起承転結を踏んでキャラが成長していっているのです。
描写の中で見えてくる人間模様がとてもドラマチックで、キャラの感情が雪崩のようになって訴えかけてくる様は圧巻の一言。
キャラたちの日常が長くされていなくても、演奏シーンを見ればそのキャラが歩んできた道のりとこれから歩んでいく道のりの二つがわかってしまうので、無駄なく自然に読めてとても気持ちよかったです。
そしてもう一つ今作を支える大きな役目を担っているのが主人公。
物語でキャラの成長を描いていく上で、主人公と言うのが最初に未熟になりがちなのは必然の事。
しかし今回は天才。未熟なポイントは実力以外の点に置かれています。
じゃあこの作品では主人公の何が成長しているのか。それは『感情』です。
コンクールに特化した無機質な演奏しかできない主人公が、楽しむことを覚えるという成長を遂げていきます。
それはさながら感情のないロボットが、感情豊かなヒロインと触れ合っていく中で感情が芽生えていくかのようで。
そんなSFでしか扱われていないような流れを、音楽という題材に乗せた事こそが今作の発明です。
であるならば、コンクール以外の場での『楽しい』を象徴する演奏をもう少し見せてくれてもよかったかなぁと思ったりしました。
恋愛物語のような始まり方でありながら、恋愛物語にあらず。