にわオタレビューブログ

にわかなオタクがアニメ、ラノベ、エロゲーなどのレビューをつづります。まったく関係ないこともつづります。

びわっこ自転車旅行記 感想

びわっこ自転車旅行記

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東京に住む三姉妹は、日頃デスクワークで体がすっかりなまってしまったっていた。
体重を量ると、学生時代から10キロ以上も増えていることがわかり、強いショックを覚える。
そして三姉妹は画策した。実家のある滋賀県まで自転車で行くことを。
作者の実体験をもとに描かれた、ゆるさとは無縁な自転車旅行記。

 

 

可愛らしい絵に騙されてはいけません。
今流行りの可愛い女の子がアウトドアスポーツを楽しくのんびりと体験するもののような皮をかぶっていながら、その実本格的な自転車の旅をこれでもかと見せ付けてきます。
剥ける手や尻の皮、肌や頭を焼く日光、気力と体力を削る長い坂道――そんな自転車旅行へのドリームをへし折ってくれる容赦ない描写の数々が読んでいて痛々しく、まるで自分が体験しているかのような息苦しさを感じます。
その辛さを上回るほどの達成感があるからこそ、彼女たちは自転車旅行の虜になったはず。ワクワクしないわけがない。


が、カタルシスの瞬間を心待ちにして読み進めていく中で、大きな欠点に気づきました。
この作品、苦痛描写がしっかりとしている一方で快感描写があまりにもあっさりとしているんです。
そのためか、読破したときの感想はどうしても『自転車旅行ってきついだけじゃん』というものにしかなりません。
そのほかにも一人称視点ではなく、神様視点なので共感性が薄い作りになっている部分ももったいない。
自転車旅行のよさを伝えるにはもう一歩必要ではありますが、現実に存在する『魅力的な苦痛』を体験できる作品でした。