にわオタレビューブログ

にわかなオタクがアニメ、ラノベ、エロゲーなどのレビューをつづります。まったく関係ないこともつづります。

エロマンガ先生 感想

エロマンガ先生

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言わずと知れた『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の伏見さんの新作です。
今回もまた妹モノ。題材は作家の主人公と絵描き兼妹のメインヒロインによる物語で、登場キャラクターはほとんどがクリエイティブ関係の職業についていたり。
一巻登場時、自分の知る限りでは他にも二作ほど同じような題材で描かれているものがあり、企画自体にはあまり魅かれるものがなく、フックの弱さは否めませんでした。
が、それはおそらく伏見さんも感じられていたことなのでしょう。タイトルがとてもチャレンジ精神に富んでいます。

エロマンガ先生

前作での長いタイトルも元祖ということで、かなりの強い印象を生み出していましたが、今度は短くも簡潔に右ストレートのようなパンチ力で攻めてきたわけです。
ここが『えっ!?』と、大きな謎を呼び、他の二作にはない明確な差別化がされました。
この『エロマンガ先生』という言葉。作中では絵師として活動している主人公・和泉正宗氏の妹・和泉紗霧様のペンネームとして使われています。
言葉自体にどんな意味が含まれているのか? なぜこんな名前にしているのか? ということは四巻まで出ている現時点では明言されておらず、正宗氏の義母であり、紗霧様の母君が生前に使っていたペンネームを受けついだことだけが明かされています。

 

明言されていないと言っても、母君がなんでそのペンネームを用いているのかがわからないというだけで、『エロマンガ先生』という言葉の役目ははっきりとしています。

そう。紗霧様を恥ずかしがらせること。紗霧様が他者から『エロマンガ先生』と呼ばれるたびに、恥ずかしさに悶える様子がたまりません。
どうして女の子が恥じらっているシーンってあんなにも萌えるんでしょうね……。
そして紗霧様が恥じるたびに『じゃあなんでそんな名前にしたんだよ』というツッコミが入り、由来が明言されていないことへの不満が募らないような工夫も万全です。

 

物語

正宗氏や紗霧様は自分たちの夢をかなえるために、様々な相手とクリエイターとしてぶつかります。
勝利を収めるたびに状況的な前進を一歩一歩確実に行っているような印象はあるものの、実態としては『現状を維持』するための物語となっています。
どの勝負でも、負ければ正宗氏と紗霧様が引き離されてしまうような状況が出来上がっていて、何としてでもそれを避けるために戦うのです。
成長物語らしい成長を描かずに物語を一本作り上げる方法として、なるほどなぁと思わされました。

 

作中で扱われる争いはそれぞれの正義をぶつけ合うタイプのもので、決着の後には相手に尊敬を抱くような後味のいい終わり方をしてくれます。

クライマックス後に負けた方が不幸になってしまうような構成はされておらず、やられていることも、お互いが自分の好きなものについて声を大にして『好きだ!』と言い合うようなとても綺麗な戦い。
読んでいて敵対する相手を憎らしいと思えないことがいいことなのか悪いことなのか、少々戸惑いを感じます。

 

キャラクター

紗霧様はもちろんのことながら、大変魅力的なヒロインばかりがそろっていて自分の中に確固たる押しメンを定めるのに苦労しました。
物語上、本来であればしっかりと描かれるべき勝負シーンなどが大胆にカットされていてもなお、成り立っている『面白さ』の理由は正にこのキャラクターの力が大きいです。


どのヒロインもまぶしいほどに自分を象徴する技術を持っており、共通して独特なデレ方を持っています。
ツンデレヤンデレ。とジャンルに分類してしまえばなんてことは無い、既存の記号キャラと大差はないはずなのですが、彼女たちのデレ方には彼女たちがそれまでの人生で築き上げてきた経験がしっかりと反映されており、それがキャラのオリジナリティをより強調することに繋がっていたり。
さて、自分の押しメンについて……非常に迷いましたが今後はこの方を応援していきたいと思います。

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ずばり、山田エルフ様です。本名はエミリー様。
立場としては正宗氏さえも魅了してしまうほどの売れっ子作家。そして正宗氏のライバルであり、一巻で絵師としての紗霧様を取り合った相手となります。
三巻までは姉御肌を持ち合わせたちょっと独特なツンデレキャラでした。しかし、事は起きます。単行本の中盤辺りだったでしょうか……エルフ様が条件付きで正宗氏に本名を呼ぶことを許可する、変化球感あふれる告白? 場面がありました。


言葉として好意を表さず、むしろ正宗氏に告白する権利をくれてやるというスタンスです。耳が悪いことに定評のあるラノベ主人公らしからぬ正宗氏はしっかりとその真意をくみ取ったわけですが、その後のエルフ様のご様子があまりにもいつも通りだったために軽いノリで本名を呼びました。
すると、エルフ様は三巻まで一切出すことのなかった最大級のデレを、一言と一仕草のみで表したのです。
もう、
やられました。
……感動です。今までのツンデレキャラクターたちは一体何なのだろう、と振り返ってしまうくらいの破壊力がそこには伴っていました。
この先のエルフ様の活躍が楽しみで仕方がありません。

 

総評

物語性をとても弱くして、いかにしてキャラを輝かせるかという考えの元作られているという印象。
それを記号としてではないキャラクター達に起こりうる葛藤でしっかりと描いているので、量産型キャラものとは一線を画していて非常に面白いです。
純粋に一度本を開けば、読み切るまで本を閉じたくないと感じさせらるような作品。
今最も続巻を楽しみにしているライトノベルです。新刊出たばっかりですが、はやく続き求む……!