にわオタレビューブログ

にわかなオタクがアニメ、ラノベ、エロゲーなどのレビューをつづります。まったく関係ないこともつづります。

【映】アムリタ 感想

【映】アムリタ

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あらすじ

芸大生・二見遭一は芸大に通い、役者を目指していた。
ある日、遭一は自主制作映画に誘われる。その映画の監督は、天才と噂されている最原最早だという。
最早の書いた絵コンテを読んでみると、気づいたときには50時間以上経過していた。
遭一は最早の生み出す作品の異常に人を惹きつける力に恐れつつも興味を持ち、制作に参加するのであった。

 

 

感想

天才ってなんでしょう。
人一倍理解が早い人? 人一倍成果を残す人? 人一倍奇想天外でクリエイティブな人?
それらの回答に対してNOを突き付けてくるのが今作。
天才がいるとするなら、それは人間じゃない超越的な何かだと今作はいいます。

 

例えば作った映画で、文字通り人の心を書き換えることができてしまうとか。
まるで魔法のように。もはや超現実的ですらあります。
そういう超現実的なものを、現実的な物差ししか持っていない読者である自分も含めた周囲の凡人には理解できるべくもなく。
作中で天才・最早の映画によって書き換えられている様を見せつけられたときに覚えたのは恐怖でした。

 

最早のよくわからなさ、そこしれなさがいかに深遠なのかを知れば知るほど、その闇は深まるばかりです。終盤でようやくこの天才がどれだけ超越的なのかがわかり、安心感を抱き始めたその瞬間に待っているどんでん返しの威力たるや……結局読了後に待っていたのは、いいものを読んだという満足感とそれからもう一つ。
ジョーズが自分のそばを通り過ぎていったような感覚――見逃してもらえたことへの安心感みたいなものでした。

 

本という媒体で、こうも四六時中緊張感を孕んだ体験をさせられることになるとは思いませんでした。
最早以外のキャラや舞台は地に足の着いたものばかり。
それが最早の存在を際立たせるだけじゃなく作品全体のトーンを実在性のあるものへといざなっていて、最早という異端者のあり方にファンタジーさを意識させられないようになっているところが大きな要因でしょう。
天才とはよくわからない怖いもの。今作は、昨今流行している都合のいい部分だけ能力が高いなどの天才描写に疑問を投げかけるようなミステリー作品です。