にわオタレビューブログ

にわかなオタクがアニメ、ラノベ、エロゲーなどのレビューをつづります。まったく関係ないこともつづります。

蒼の彼方のフォーリズム 感想

蒼の彼方のフォーリズム

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あらすじ

人間が空を飛ぶことが普通になり、世界ではスカイスポーツ『フライングサーカス(FC)』が流行している。
かつてFCの伝説的選手だった日向晶也は挫折を味わってFCから遠ざかっていた。
そんな彼の通う高校に倉科明日香が転入学してくる。晶也は明日香が初めて空を飛ぶ手伝いをすることに。
空を飛ぶことの面白さに感動する明日香を見た晶也は、周りのヒロインたちと共に昔感じたFCへの熱意を思い出していくのであった。

 

 

感想

なんて惜しい作品。

 

まず語りたいのはみさきというヒロインのルートです。とてもいい物語に久々に出会えました。
みさきは才ある者への嫉妬を誰よりも強く抱き、才なき自分を正当化しようとする人間的な弱さを持ち合わせています。
そういう現実で誰しもが一度は直面しうる人間らしくも生々しい葛藤に真正面から向き合っている様が、プレイヤーが過去の自分の体験からくる苦味を含んでいるために思わずのめりこんでしまいます。
そしてどっぷり共感させられた末に乗り越えてくれるものだからスカッとさわやか!

 

人間ドラマもさることながらFCの描写も最高です。みさきルートはFCという未完成のスポーツを次の段階へと押し上げる『新開発チャレンジ』の話でもあります。
それまでの概念を怖し、新しい概念で戦おうと努力する熱い展開なわけですから面白くないわけがない。
それを語る上で登場するそれぞれのキャラが持つFC観と強みがはっきりしているので、今やっていることがすごいことなんだということにとても説得力がありました。
ところがせっかくみさきルートで稼いだ高ポイントを台無しにする、他のヒロインの存在があります。

 

 

ずばり、明日香ルート。
明日香ルートでは明日香の抱えている問題だけじゃなく、主人公の晶也が飛べなくなった理由と真正面から向き合うような話まで含まれています。
伝説的とされる晶也の活躍や、明日香の底知れない怪物性と興味を引く要素がたっぷりなためにわくわくしながらのプレイ。だというのに……よりにもよってどのルートよりも一番描写がひどかったです。物語もFCも。
とにかくロジックがない。才能と根性と道具の性能があわされば強くなるよ! と『レベルを上げて物理で殴る』某クソゲーを匂わせる作りです。
みさきルートで各キャラの革新性や強さの思想がしっかり組み立てられていただけにこのひどさは一層際立って見えます。
晶也が立ち直るのも会話の中で唐突に。いわゆる『説得』ですね。ああ、その程度の悩みなんだ感満載でげんなりしました。晶也がFC選手として立ち直るならそれは空の上でしかありえないでしょう。なんで教室で説得されてるんですか。

 

 

全体を通して気になったのはFCというスポーツがある世界観の作りこみの甘さ。
空を飛ぶための道具と、その発着場、そしてFCというスポーツを成り立たせるための道具以外があまりにも現代すぎる印象です。
ノートパソコンがぶあつかったり、連絡を取り合う端末がスマートフォンだったり。
人が個人で空を飛べてしまうほど技術の発展した世界なら、都心から離れた土地といえども生活の中でもっと発展した技術体系の中で生まれている道具に囲まれていないと違和感がぬぐえません。
他にも空中でぶつかったらはじかれるという設定が恋愛パートでおざなりになっていたり、背面飛行は難しい技術とされているのにイベントCGであっさりやっていたり、随所に甘さが目立ちます。

 

 

それでもみさきルートのすばらしさを鑑みたとき、ひどい作品だとは言いたくないと思わされる魅力はある。そういう作品でした。